潮の香りが漂い、古くから漁業が盛んな港町・牛深。この地で伝統を守り「薫製(くんせい)かまぼこ」を作り続けるのが、創業50年を超える老舗の「貝川かまぼこ店」です。1981年から経営を切り盛りする貝川謙介さん(66)に、かまぼこに対する思いについて聞きました。

松の木で燻す伝統製法を守り続ける

ーどのような手順で蒲鉾を作るんですか?
貝川さん:魚の頭と内臓以外を、すべてすり身にします。すり身にした魚の鮮度を保つために、冷やしながら練り込み、整形し、蒸し器に入れ、最後に薫製でじっくりと燻(いぶ)します。その後、真空パックし、冷却。ツヤや結着性を出すために、卵白も入れています。

ーどのような種類の魚を使っていますか?
貝川さん:その時期の旬の魚ですね。アジやシイラ、ボラなどの青魚が主です。

ーくん製の蒲鉾は他の土地ではあまり見ないですね。
貝川さん:くん製は、かつて冷蔵技術がなかった時代に、魚を保存させるために用いられていた製法です。天草産の「松の木」で燻します。松の木は、殺菌作用があり、かつ独特の香りが残ります。

常に遊び心を持ってかまぼこ作りに取り組む

ー貝川かまぼこ店さんでは、「燻製蒲鉾」が人気ナンバーワンだそうですね。

貝川さん:古くから牛深に伝わる製法で作る自社のかまぼこには、絶対的な自信があります。薫製蒲鉾以外の商品もありますが、うちから出している商品としては、薫製蒲鉾が人気ナンバーワンですね。

ー薫製蒲鉾を私も初めて口にしましたが、口に入れた瞬間に、中から鼻の奥を突き抜けるこの芳醇な香りがたまりませんでした。かまぼこを作る中で、大切にしていることはありますか?

貝川さん:常に「遊び心」を持ち、蒲鉾を作り続けています。今までにない、誰もが作ったことのないものを作りたい。作ることを楽しみながら、研究心を忘れずに、貝川かまぼこ店でしか作ることのできない、おいしい蒲鉾を作り続けていきたいと考えています。

-今までに、どのようなかまぼこ製品にチャレンジしてきたんですか?

貝川さん:かまぼこに青汁を混ぜてみたこともあります。青汁は、健康食品として知られていますが、「まずい」や「苦い」といったイメージが強かったりするじゃないですか。そんな青汁をかまぼこで試してみたら、どうなるんだろうと思って。実際にチャレンジしてみましたが、社中で不評だったので、ボツになりました。他にも、カレー味のかまぼこに挑戦してみたこともあります。

イカ墨に柚子胡椒。かまぼこの新商品開発へのあくなき思い

ー本当にどんなことにもとことんチャレンジされているんですね。実際に商品化されたものは、どういったものがありますか?

貝川さん:イカ墨を混ぜ込んだものや、柚子胡椒入りのものです。これらは人気があります。

ーイカ墨に柚子胡椒…。また珍しい種類のかまぼこですね。いろんなかまぼこ製品を開発することになった、そのきっかけは何だったんでしょうか?

貝川さん:以前、かまぼこの店頭販売を行っていたときに、店頭のテーブルに品数が少なく、さみしいと感じたんです。それもあって、色んな種類のかまぼこを作ろうと思いました。

ー薫製蒲鉾はどのくらい日持ちしますか?

貝川さん:真空包装をするので、約2カ月間は持ちます。添加剤や防腐剤などは一切使用していないので、安全・安心ですよ。

ー貝川さんのこれからの目標は?
貝川さん:伝統を守りつつ、新たなチャレンジをし、かまぼこのおいしさを追求していきたいです。「逆立ちして食べたくなるほどおいしい!」というくらい、誰もが心動かされるような、かまぼこを目指したいですね。

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くんせい蒲鉾製造 貝川かまぼこ店
住所:〒863-1902 熊本県天草市久玉町新久玉5713-33
TEL:0969-72-3115
HP:http://kaigawa.jp/item01
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